起業のきっかけは、「ゴミ」への素朴な疑問をもったこと
小松 ─ 脱サラしてカフェをはじめたのですが、思いのほかゴミがたくさん出まして…。
処理方法などを調べていたら、コスト面でも環境面でも、もっと良いやり方があるのでは?と思ったのです。
そこで廃棄物管理というビジネスを構想したのですが、法律上、僕が考えているビジネスモデルは不可能であることがわかったんです。
向井 ─ せっかくの構想が法律が、ハードルになって実現できないとは…
小松 ─ はい。5人ほどの弁護士に相談したところ、廃棄物の「仲介・媒介・斡旋」に関わる事業は違法ではないか?と判断されました。
でも、ある弁護士さんから「これは社会正義だよ!だから進め!」と言われて(笑)で、絶対にやってやろうと!
向井 ─ 相当な覚悟が必要だったんですね。
小松 ─ 会社の経営的にも後戻りできない状況でもあったので、リスクがあっても進むしかなかったのですが(笑)。
そこで早速、許可を出す機関の方に確認してもらいました。
そうしたら「この事業は、仲介・媒介・斡旋ではなくコンサルティング事業だから、我々が管理したり制限できるものではない」と解釈してくれて。
それで、やるしかない。突き進むしかないと!
向井 ─ 行動力で未来に続く扉をこじ開けていったんですね!
「なんで?」「なんで?」を繰り返す先に未来が拓ける。
小松 ─ 環境問題って「エコバッグを使えば良い」とか「ゴミは分別して捨てれば良い」とか、表面上で理解して貢献していると思っている人が多いように感じます。だけど食品スーパーでこの野菜はどこから来たのか?誰がどんな作り方をしてるのか?」とか、「そもそもどうすればゴミを減らせるか?」を考える人は少ない。
問題になっている海洋プラスチックゴミやマイクロプラスチックについても「海にゴミ拾いに行ってます」っていうのは良いことですけれど、海洋ゴミの問題が自分たちの日常生活とどうつながっているのか?どうすれば解決するのか?を考えて実践している人は少ないと思います。
向井 ─ 「対処」することはできても、そもそもどうしてゴミが出るのか?どうすればそれを削減できるのか?というところまで理解した上で行動されている方はなかなか…。
小松 ─ ゴミ拾いを行うだけでは永久に海洋プラスチック、マイクロプラスチック問題はなくなりません。
プラスチックの生産量は増えています。現在4億トンとか5億トンぐらいの生産量と言われていますが、2050年には10億トンを超えると言われています。
反対しても、便利だからなくならない。解決するためには、謎解きやパズルのように「廃棄物が資源として循環する仕組み」を考え、具現化していく必要があるのです。向井 ─ 謎解きを繰り返しながら解決に結びつく仕組みを作っていかれたんですね。
小松 ─ 「ゴミは回収して資源化する貴重なもの」という概念のもとに、ゴミを原材料にして開発したのが、弊社オリジナルのゴミ袋「FUROSHIKI」です。
これ、原材料の99%がゴミ。ゴミから作っているので新しい原材料に依存しないし、燃やさなくて済むのでCO2が減るんです。
向井 ─ 燃やさない!すごい!画期的です!エントリンク読者のみなさんにも、ぜひ使っていただきたい。
小松 ─ いま「FUROSHIKI」を採用してくれる企業が増え何万人ものお客さまがゴミから作ったゴミ袋を使う状態になっています。さらにそれを資源として回収する仕組みができつつあります。
向井 ─ こういった循環型の仕組みが様々なジャンルで実現していれば未来は変わりますね。生活のいろんなシーンで「?」を感じとりつつ、個々に謎解きをつなげていく先に、より良い世界が見えてくる。
私たちの役割は、未来の課題を解決できる「人」と「仕組み」をつくること。
小松 ─ゴミ問題をはじめ、これっておかしいよね?って思うことが世の中にたくさんあります。
この「おかしい」を解決するために行動できる人たちを作るのが、私たちの役目だと感じています。
百年先の未来。僕らが存在しない時に、主体性を持って行動できる人材がいないと百年先の問題って解決できません。だから大切なのは、問題を解決する「人づくり」や「仕組みづくり」なんです。
向井 ─今のうちに、いろんな場面でたくさん仕掛けていきたいですね。好奇心が旺盛な子どものうちから、「なんで?」「なんで?」を育んでいきたいです。
小松 ─問題解決の謎解きが面白いと感じる人たちを、たくさん育てていく。自分が発見した問題を解決するのがすごく楽しい!すごく面白い!
と思ってる人たち。そこに自分の人生の意味や意義があるって感じる人たちを作ると、百年先まで安心じゃないですか。弊社の社員教育というのは、考える力を培い養うこと。社員に「環境レポート」を作ってもらっているのも、メンバーが環境問題を自分事として考え、常に「なんで?」「なんで?」を考えられるようにするためなんです。
向井 ─そうですね。環境問題って、つい「他人事」と捉えがちです。日々の暮らしに追われてあとまわしにしちゃってましたなんて言うと、百年後に何が起こっているか…。
ところで、ゴミ袋の循環以外にも新しい仕組みづくりに取り組まれているとか。
小松 ─ゴミを鉄鋼の原材料にする仕組みづくりをしています。鋳鉄や鋼の溶解で鉄を固くするために添加するものがあります。「加炭材」というのですけど、これまで天然資源の「コークス」が使われていました。これに代わって、捨てられたプラスチックから生産する技術を持つ会社とともに、流通を拡大しています。
実は日本だけで廃プラスチックが年間約900万トン出るんです。そのうち約600万トンぐらいが焼却炉で燃やされています。この600万トンを原料に鉄を作れたら、日本が輸入している加炭材の %を自分の国でゴミから生産・供給できるんです。遠い国の鉱山で採掘して輸入して、火力かけて焼成していくプロセスがなくなり、CO2の排出もぐっと減らすことができる。
向井 ─なんて壮大な謎解き!地域や時代を超えたスケールのパズルですね!こういった新しい仕組み、いわば「答え」に行き着くのも「なんで?」という繰り返しがあるからでしょう。それを家庭や学校で、子どもの成長に合わせてしっかりと身に付けられたら良いですね。
小松 ─向井さんが、ぜひ仕掛けてください!子どもたちが興味を持ってくれるような「謎かけ絵本」を作って、「え、なんで?なんで?」という子どもたちを増やしていくとか。子どもたちが環境の問題にしぜんに向き合うように。それは結果として経済成長にもすごく貢献するわけですよ。再生資源がぐるっと回ると、経済的利益も生むわけですから。
向井 ─このゴミはどこに行くのかな?そこからどうなると思う?とか…楽しみながら、連想ゲームのように学び進められていったら。
小松 ─面白さって大切です。「責任」という言葉って頭を硬直させません?「ねばならない!」よねって。「ねばならない」ことっていうのは、やれば終わりになるのでみんな興味持たないんです。「面白い」って思わせないと先がないですよ。
向井 ─おしまいじゃなくて、ネバーエンディングストーリーにしていく!ステキですね。
日々の暮らしと、百年後の未来は、確実につながっている。
小松 ─私たち人間の生物としてのコンセプト・役割は「次の世代を作り繋いでいくこと」。途中の媒介役でしかない。
向井 ─人間は遺伝子の乗り物なんですよね。乗り物として、いつのまにか乱暴な運転しちゃっていてすみません!
小松 ─(笑)だからやっぱりその「繋いでいく」ところをベースに考えると、私たちの我欲がなくなる百年後をベースに、考えられる人を作って、次に遺伝子を継いで行くことが必要なのだと思います。
向井 ─マンションに住んでいる私たちも、ゴミを捨てに行くときに、このゴミはどこでどうなるの?などと立ち止まって考えてみると良いですね。
子どもたちだってゴミを捨てるときにいろんなことを考えたり発見したりしているはずなので、親子で一緒に考えていけたらステキなんです…けど、主婦は本当に忙しくて…。
「未来のことを考える」っていう余裕が生活の中から削り取られていて、今日をどうやってコスパとタイパ良くクリアしようかってがんばっちゃうと…。このゴミの行方は?というよりも「捨てといてね!」となってしまう。なんとかして子ども達と一緒に「なぜ?」「なんで?」と考える時間を確保したいです。
小松 ─親の存在って重要ですよね。親がどうフィードバックしているかによって、子どもの将来が変わってくることもあります。
向井 ─これから、どんなところに着目して、どんなアクションを起こしていくおつもりですか?
小松 ─僕らがいなくなった時代のことまでしっかり考えてアクションを起こしていきたいです。生きている間って、どうしても我欲で動くんですよ。僕にも否定できないところはあります。でも自分がいなくなった後の社会を考えると「続く仕組みを作る」とか「考えられる人を作る」とか、僕らの世代がやるべことが見えてきます。プラスチックの問題にしろ、原子力廃棄物の問題にしろ、コントロール不可能な方向に向かっています。その行き先を直接僕らが変えることなんてできない。だけど、それを資源に変えたり、循環する仕組みづくりに取り組んでいきたいと思います。それと、やっぱりみんなで取り組みたいのは「人づくり」です。いま自分たちが考えられる人になったのは、自分の親のおかげ。自分たちも子ども達に、その先の子孫に向けてその考えを繋いでいきたい。
この連鎖の力で、今まで考えてもみなかったことが実現したり、課題が解決していくと考えると、面白いじゃないですか!
向井 ─面白い!と思ったら最強ですよね。
今を生きる私たちそれぞれが、それぞれの立場から「なぜ?」「なんで?」という想いを繋いでいきましょう。

対談後記 「環境課題」を解決する事業のことから、意外と知らないゴミの話、それをアップサイクルする仕組みのこと、さらに子育てのことまで、もう、お話が楽しくて、あっという間に時間が経過してしまいました。子どもたちが持っている「なんで?なんで?」という純粋な好奇心。それを大切に育んでいけば、きっと将来、課題を解決できる!そんなお話にとても共感しました。私も大好きな分野で子どもたちの「好奇心や探求心」を育んでいきたいです。まずは絵本づくりかな!? |