相手の笑顔が見えるから、楽しく「SDGs」を目指すことができるんです。
編集長
向井さん、今日はありがとうございます。このENTLINKはマンションライフをSDGs的な観点からより良くシフトしていくための情報誌です。向井さんが日常生活で心がけていること、能動的に動いている活動などを教えていただけますか?
向井さん
はい、まずはできるだけゴミの量を減らすことを意識しています。子どもたちも食べざかりですし、夫も食べる量が多いので(笑)。
大学で専攻したのが生物農芸学だったこともあり、食べ物を最後まで大事にしようという気持ちはもともとあったんです。
玉葱の皮、ブロッコリーの芯、しいたけの石づきなど、捨ててしまいがちな部分をためておいて、野菜スープのベースにしています。「ベジタブルブロス」、略して「ベジブロ」と呼んでいます。いつも冷凍庫の一番下の段にザクザク保存しておいて、大きな寸胴で煮込むんですけど、これが美味しいの!ラーメンのスープにしたり、カレーのルーのベースにしたり。昨日もチゲを作ったのですが、「ベジブロ」で作ると、旨味成分が重なって、味わい深いお出汁になるんですよ。そのようにして、食べ物は最後までおいしく使い切るようにしています。
編集長
ゴミを出さないだけでなく、美味しくいただくためのアイデアなのですね。アクションの先に家族の笑顔がある。それが長く続けられる秘訣なのかもしれません。ところで向井さんは、遠く離れた地域の子どもたちの笑顔をつくる活動もされているとか。
地球上にはちょっとしたアクションで、笑顔になる人達がたくさんいます。
向井さん
サイズアウトしたお洋服をケニアのマサイ族に贈る活動を10年以上続けています。きっかけは家族で行ったアフリカ旅行。
子どもたちの洋服を現地で洗濯できるかどうかわからないので、汚れたら手離しても良いものをトランクに詰めて行ったのですが、それをマサイ族のお母さんたちに話したら、もし廃棄するのなら「自分たちの子どもたちのために、全部ゆずって」と言っていただいたんです。
編集長
現地では、まだまだ衣料品が不足しているということですね。
向井さん
はい、そこで日本に帰ってから友達や道場の方々に声がけをして、サイズアウトした上履きや体操着、制服などを集めて贈りました。靴、洋服、かばん、帽子、現地の子どもたちはみんな大好きで、とても喜んで大切に使ってくれています。
編集長
普段ならば廃棄してしまうようなモノでも、必要としているところへ送ると喜んでいただけるんですね。たとえば、マンションに居住している皆さんがそれを行えば、とても大きな力になりますね。アフリカへ贈らなくとも、マンション内で不要になったものをシェアしてリユースすることでも様々なメリットが期待できそうです。マンション内でリユースする動きを、このENTLINKでどんどん提案していきたいですね。
向井さん
いいですね!私もアフリカに洋服を送りたい!という思いで、学校や幼稚園のママ友などいろんな方に声がけをしてみましたら、「サイズアウトしたお洋服をどうしたらよいかわからなくて困っていた」という方がたくさんいらして…。七五三のときに着た洋服とか、入園式や卒園式に着た洋服とか。二、三回しか着ていないお出かけ服は人に譲れるのですが、かなり着倒したものとか、清潔にはしているのだけど、ちょっと色あせた洋服とかね。靴もくたびれているものだと人にあげるのも申し訳ないという思いで、モヤモヤした気持ちで処分していたそうです。
編集長
まだまだ使えるものが、たくさん処分されていたわけですね。
向井さん
そうなんです。「アフリカに贈って喜んでもらえるのなら」と、たくさんの洋服や靴が集まりました。
靴を贈ることで、アフリカの子どもたちの「命」が守られる。
向井さん
実は、アフリカの子どもたちが命を落とす原因のひとつが「靴」が無いことなんです。
裸足で歩いていて、足から破傷風菌が入ったり、足の爪の間に入った虫「砂ノミ(砂の中にいるノミ)」に噛まれて、菌やウイルスが子どもたちの体に入って、たんさんの子どもたちが命を落としているんです。学校に行くのに一時間かかる道を裸足で歩いて行きますから、毎日が危険と隣り合わせなんですね。「靴さえあれば、命を落とすリスクをぐっと減らすことができる」という現地のママさんたちの声を聞いて毎年靴を集めて送り続けてきました。コロナの影響で一時途絶えてしまったのですが、現在、窓口になっている方と、再開できないかと連絡を取り合っているところです。
編集長
相手の喜ぶ顔が見えるから長続きするというのもありますね。
向井さん
その通りで、日本のママさんたちが贈ってくれたものがどんなふうに使われているのかを、現地スタッフさんが撮影して送ってくれるんですが、それがまるでサバンナのファッションショー!その写真を見せると、お洋服を寄付してくれた方に、とても喜んでいただけるんです。
小学校の名前が入っている体操着や、パジャマでも、すごく素敵に着てくれたり。私のワンピースのお下がりに赤いTシャツを合わせたり。オシャレ番長みたいな子もいるんですよ!
編集長
衣料品を製造するにも、廃棄するのにも、とても多くの資源を使用します。その節約にもなる活動ですね。
向井さん
私も洋服が好きなので、購入して充分に楽しんだら、次に必要としている方にお渡しできたほうが資源の節約にもなるし、洋服たちも喜ぶのではないかな、と。洋服を着るワクワクした気持ちごとお渡しできたらいいなぁと思います。
編集長
向井さんのアクションの先には相手の顔があります。食品ロスを減らしながら、より美味しいお料理を作ったり、お洋服の廃棄を減らすだけでなく、必要な人へお渡しすることでアフリカの子どもたちに喜びを与え、命を救うことにもつながっていく。こうした活動があるということを、マンションの住人さんに伝えることで「自分たちにもできることがある」と気づいていただけると良いですね。
向井さん
やってみると気がつくことがたくさんあるんです。たとえばヨレや毛玉が気になる洋服や毛布などは「古着deワクチン」に送るとか。これは、不要になった衣類等を回収するキットを購入すると支援団体を通して開発途上国の子どもたちにポリオワクチンを届けられる仕組みなんです。
編集長
そうなんですね!その活動も素晴らしい!知らないことが多いし、「何をしていいかわからない」そんな多くの人々が、知るきっかけ、行動するきっかけを本誌がつくっていきたいと思います。本誌と連携するマンション管理システム「ベルシェルジュ」に、居住者のみなさん同士でシェアしたり、必要としている外国の方々にお渡しできるシステムが作れたら良いですね。
「SDGs」を実践していくために、マンションのコミュニティが果たす役割。
向井さん
マンションは人生のとても長い時間を過ごすコミュニティだと思います。私の中では「学校」のイメージに似ているかも。学校については歴史があって、偏差値がどうで、著名人をどれだけ輩出しているか?などの点で人気や価値が決まる側面もありますが、そこに子どもを通わせようとか、自分が入ろうというときには「校風」が非常に大切ですよね。自由な校風とか、先輩後輩の仲が良いとか。地域貢献に熱心だとか。そんな「学校の校風」と「マンションの管理」には通じるものがあるように思います。
めざしたいのは、持続可能なコミュニティ
編集長
マンション管理のコンセプトで、生活のクオリティや住み心地も変わってきます。
地域貢献に熱心なマンション、持続可能なライフスタイルが叶えられるマンションというのも「そこに住み続けたい」という理由になると思います。本誌はマンション内のコミュニティを大切にしたいと考えています。現代社会だと、隣の人を知らないというのが当たり前ですが、セキュリティ上、こんな恐ろしいことはありません。震災などの自然災害等があったとき、隣人とのコミュニケーションが防災・減災にもつながります。
向井さん
ほんとうにそう思います。現代社会ではインターネットは身近に感じるのですが、リアルな隣人への精神的距離感が大きいですよね。なにか災害があったときなど、隣の人と仲が良い、マンション内のコミュニティがしっかりしているというのも、安全・安心につながります。
編集長
これからENTLINKは、「衣・食・住・娯楽」という多様なシーンで、より持続可能で豊かなライフスタイルを実現していくための情報発信をしてまいります。これからも向井さんのアイデアや意見をいただいて、より良い提案ができる雑誌にしていきたいと思います。
向井さん
はい、ぜひぜひ!様々な「アイディア」や「経験」「ネットワーク」を持ち寄って、マンション居住者の皆さまが「住んでよかった」「ずっと暮らし続けたい」と思っていただけるようなコミュニティづくりをお手伝いしたいです。
編集長
この「ENTLINK®」も、ひとつの持続可能なコミュニティになれるよう、頑張っていきます!よろしくお願いします。
向井亜紀さんPROFILE
テレビ・ラジオなど幅広く活躍。1994年に格闘家 高田延彦氏と結婚。その後、子宮頚がんによる子宮摘出で妊娠16週の小さな命を失う。2003年 代理出産を依頼した米国人女性が双子の男児を出産。“命を輝かせるためにがんと向き合う”など、自身の体験を基に、全国各地で講演活動を行っている。