スマホを片手に散歩をしている年配の女性に声をかけると
「はねぴょんのポイントをためてるんですよ」と意外な答えが返ってきた。
大田区が区民の健康促進のために開発した「はねぴょん健康ポイント」というアプリは多くの大田区民に親しまれているが、ここ鵜の木エリアでは2023年の2月に、このアプリを活用するなどしてクイズ&ウォーキングラリーを開催した。参加したこの女性は、地域の同じ参加者と出会い、それ以来アプリで情報交換をしているという。
令和5年度SDGs未来都市と自治体SDGsモデル事業にダブル選定された大田区は、都内23区の中でもっとも広い面積を誇る。18のエリアに分割し、それぞれ特別出張所で地域の活動を支援している。中でもこの鵜の木エリアは多摩川の豊かな流れを抱き、子どもたちが駆け回る公園には古墳時代から残されている埋蔵文化財の横穴墓があるなど、いくつもの史跡が保存されている。
そんな街中で高齢者たちが、スマホのアプリを利用して、健康づくりの仲間を増やしていると聞き、SDGsで掲げられている目標を、ひとつのエリアでいくつも実現しつつある現状に驚きと喜びを感じて取材した。
もともと大田区の保健所で健康づくりを担当してきた職員はこう語る。「健康づくりというテーマは世代を超えて、共感を得られやすい。区の主催でイベントなどを企画するときには、集客や話題性を求めがちだが、ある調査をきっかけにソーシャルキャピタルという概念の大切さに気づいた」。その調査というのが、官学協同でおこなわれた「人生100年を見据えた健康寿命延伸プロジェクト」である。
令和元年から実施されている「キラリ☆健康おおた」プロジェクトと前述の「はねぴょん健康ポイント」事業を基軸とした、アンケート調査、健康診断、歩行習慣などのデータをもとに、地域参加や近所付き合いなど居住エリアの環境分析や年齢別の人口対比などを大学などと一緒に研究を重ねてきた。
令和4年度はその分析成果を地域実装を目的に、モデル事業の実施場所のひとつとして鵜の木エリアが選出された。そのイベントの一つがアプリを利用したラリーだったというわけだ。
「健康づくりは地域のつながりを広げていくには、うってつけのテーマで、地域イベントなどを通じて、子どもから高齢者までそれぞれの年代や立場で、自分自身だけではなく、地域に住む人の健康や命のことまでも考えるきっかけになる」
「肉体的な健康はもとより、隣人の顔が見えることによる安心感や住みやすさは、心理的な健康の元手になる。孤立を防ぎ、自助から共助へと向かう地域の土台ができれば、いずれ防犯や防災のときに、その絆が必ず多くの命を守ることにつながる」
「キラリ☆健康おおた」のアンケート調査において、鵜の木エリアは大田区18エリアの中でも「幸せだと感じている方」や「居心地がよい地域と思っている方」、「地区に愛着がある方」が多く住んでいるという結果がわかってきており、地域のつながり(絆)を活かした取り組みによって、今後ますます地域が活性化していく可能性がある。キラリ☆輝く瞳をした若き職員の熱量は、なるほど「SDGs未来都市おおた」の底支えになっていることは間違いない。
SDGs未来都市おおたの取組
大田区は2023年度、内閣府よりSDGs未来都市及び自治体SDGsモデル事業に選定され、いわゆるダブル選定都市となりました。これはSDGsの理念に沿った取組を推進する先鋭的な都市であることを認められた結果です。
新産業と匠の技が融合するイノベーションモデル都市
大田区は、高度な技術を持つ製造業が集積する「ものづくりのまち」という側面と、羽田イノベーションシティを起点に「新産業を創造・発信するまち」という二つの側面を有しています。この二つの側面を強固に結び付け、更なる大きなイノベーションを生み出し、区民の生活利便性の向上や環境改善に資する革新的な技術・サービスを創出するとともに、次代を担う人材を育成することで、このイノベーションの流れを持続可能なものとします。
おおたの未来創造プロジェクト〜羽田からつくる・つなぐ・はばたく〜
羽田に集積する国内外のヒト・モノ・情報の交流を活性化させ、公民連携によるスマートシティの構築などを通じてイノベーションを創出し、ものづくり産業の更なる発展を図ります。また、将来の地域社会を担う人材を育成し、匠の技術力と多様な主体を掛け合わせることで新たな価値を創造し、持続可能なおおたの未来を創ります。
―つくる―
新たな産業をつくる
『HANEDA GLOBAL WINGS』
―つなぐ―
多様なステークホルダー間をつなぐ
『大田区公民連携SDGsプラットフォーム』
地域の支え合いにより支援をつなぐ
『おおたフード支援ネットワーク』
―はばたく―
未来に向けてはばたく人材を育成する
『大田区独自教科「おおたの未来づくり」』
暮らしを快適に災害時は強い守りに希薄になりがちな近所づきあいもイベントを通じてつながれば、無理せず楽しいおつきあいができそうです。地域イベントからマンションごとの活動へ。少しずつ和が深まれば、災害時への備えも協力できそうです。ふだんの暮らしを豊かにし、万が一の時には団結できるご近所づきあい。まずは毎日の挨拶から始めてはいかがでしょうか。 マンション単位・地域ぐるみの防災を災害時には住民同士の助け合いと自治体との連携が重要なポイント。マンションぐるみの防災対策・防災訓練や地域ごとの備蓄、そしてふだんからの自治体とのつながりが大切です。町内会への加入・未加入を問わず、積極的に参加することを心がけたいですね。 ENTLINKを通じて地域のつながりを活性化被災時には自助・共助・公助が必要です。ENTLINKでは自治体の活動を広く紹介していきます。マンションに暮らす方々と自治体をつなぐツールをめざして、楽しくためになる情報をお届けします。 |