2024.11.08★★★

FEATURE 特集 食べる

  • 雑誌掲載

THE NEXT FOOD CULTURE

未来の食材の現在地美味しさと地球への優しさを両立する「大豆」「ダチョウ」「昆虫」

  • 大豆
  • ダチョウ
  • 昆虫
  • たんぱく質危機

食べること 人間が生きていくうえで基本となるこの営みは 栄養バランスが取れていればOKというわけではありません
おいしいと心が満足すること 頑張った自分へのご褒美 誰かと共にするかけがえのない時間
そして 最近特に耳にすることの多い 環境と食糧不足問題も忘れてはいけない課題ですね
今回 未来の食材をテーマに 未来のたんぱく源の普及に取り組む3社
「エス・ロジックス株式会社(シダックスグループ)」「常南グリーンシステム株式会社」「TAKEO株式会社」にお話を伺いました

目次

温暖化と人口増加によるたんぱく質不足を救うのは?

 とにかく暑く長かった今年の夏。地球沸騰化とも言われ、世界でさまざまな目標が掲げられているものの、温暖化に歯止めがかかる様子がありません。牛のゲップに含まれるメタンガスもその要因のひとつとされ、地球温暖化や環境汚染の原因になると指摘されています。
 また牛・豚・鶏に替わる代替肉が必要とされている背景に、食糧不足への懸念があります。国連の人口推計によれば、2058年に世界人口は100億人に達すると予想され、2050年には人口増加に対し、たんぱく質の需要と供給のバランスが崩れる「たんぱく質危機」が訪れると危惧されています。
 この課題を解決する手段として注目される「大豆ミート」「ダチョウ肉」「昆虫食」をSDGsの視点で考えてみましょう。

破棄されるものを有効活用!
「大豆ミート」の可能性

 SDGs への意識やヘルシー食材として期待される大豆ミート。植物から作られるため、プラントベースミートとも呼ばれています。シダックス株式会社では、ヤマキ株式会社との共同開発で誕生した大豆ミート“畑のミートボール”を使用し、給食事業や冷凍食品の展開など、大豆ミートの普及を進めています。
 “健美創菜(けんびそうさい)”というブランドで冷凍弁当事業を担うエス・ロジックス株式会社(シダックスグループ)の野澤さんに、大豆ミートの魅力をお伺いしました。
 「大豆ミートは、大豆を加工する際に出る絞りかすから作られています。開発当初は大豆特有の臭いが気になるという声も多かったのですが、メーカーさんと協力してだしの旨みでその問題をクリアし、さらにごぼうやれんこんなどを合わせて、食物繊維が豊富で食感も楽しめる根菜団子になりました。肉に比べると低脂質・低カロリーで、大豆たんぱく質を豊富に含んでいます」
 この“畑のミートボール”を使用した冷凍のお弁当「健美創菜」は、ECサイトで購入することができ、また置き型社食として展開されています。おいしさや食感にこだわるのはもちろん、「破棄される部分を活用すること、冷凍食品として販売することで、食品ロスの課題解決にもつながります」とのこと。
 「健美創菜」のお弁当には、大豆おからとこんにゃくから作られたお肉のような食感の「Deats(ディーツ)」も使われています。日本では、古くから大豆を味噌や豆腐に活用してきました。豆腐を作る際に出るおからを取り入れることは、日本の食文化を見直す取り組みとも言えそうです。

 最後に「今の子供たちは学校でSDGsについて学んでいるので、大豆ミートに対する抵抗もない。10年後にはもっと身近な選択肢として大豆ミートがあるのでは。環境と健康とおいしさにこだわった冷凍というスタイルで、消費者が手軽に手に取つてもらえるようにしたい」と話してくださいました。

ヘルシーなのに肉好きもご満悦!第4の肉「ダチョウ肉」

 牛肉・鶏肉・豚肉に匹敵する「第4の肉」として、じわじわとその存在感を広げているのがダチョウ肉です。2024年夏、「オーストリッチ丼」が牛丼チェーン店から限定発売されたことも話題になりました。
 ダチョウ肉は赤身肉で、低脂肪・低カロリー、高たんぱく、鉄分豊富と、たんぱく源として現代人に嬉しい食材なうえ、クセや臭みもなく食べやすいのが特徴です。
 ダチョウ王国を営む常南グリーンシステム株式会社代表の矢口さんによると、ダチョウの飼育を始めたきっかけは、当時の社長であった矢口さんのお父様が「テレビで観てピンときた」ことだそう。
 海外への視察など準備期間を経て、1997年にダチョウのヒナの飼育を開始。どんどん大きくなるダチョウの成長に合わせ、肉として販売するため国内初のダチョウ専用屠場を建設し、現在、牧場には他の多くの動物も集まり、ダチョウ肉のバーべキューの提供、レストランやショップの運営と、活動を広げています。
 美味しいお肉にするには、ダチョウが健康であることが何より大事。「ダチョウには穀物を中心に独自配合した餌を与え、広々とした農場でのびのび飼育しています」とのこと。
「上フィレはステーキやローストダチョウに、しゃぶしゃぶもおすすめです。それに火を通しすぎないこと」と美味しくいただく調理のポイントも教えてくださいました。
 「ダチョウはゲップをしないためメタンガスを排出せず、牛肉と比較して、飼料効率が高いのが特徴です。肉や卵が食用になるだけでなく、卵の殻もエッグアートや植木鉢用などに重宝されますし、オーストリッチの革製品、サンバや宝塚の衣装などに欠かせない羽根など、捨てるところがほとんどありません」
 最後に、「最高のダチョウ肉を作り、ダチョウが大空を羽ばたけるよう、普及していきたい」と話してくださいました。

美味しいから食べたい!
「昆虫」好きならチャレンジを

 昆虫食と聞いただけで私には無理……と感じてしまう人も多いかもしれませんが、まだ市場は小さいものの、未来のたんぱく質として注目されているのが昆虫食です。昆虫食TAKEO 浅草本店は、築60 年の古民家を利用した昆虫食カフェ。タガメサイダーやコオロギパスタ、昆虫つくねのやさしいチーズリゾットなどのメニューがいただけるほか、商品を購入することもできます。
 店長の三浦さんは、「食べたい人だけが美味しく食べられれば良い」と、単に選択肢の一つとして存在してほしいと言います。
「勘違いされることも多いのですが、ここにある昆虫は食用として養殖されたものが多いんです。衛生的で、栄養価も高く、種類にもよりますが、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、食物繊維、アミノ酸などが含まれています。
 昆虫は効率的に飼育でき、例えば、コオロギは同じ量のたんぱく質を生産するのに必要な飼料が、牛の約1/10と言われているそうです。また昆虫の飼育は温室効果ガスの排出が少なく、従来の家畜に比べて環境に優しいと教えてくださいました。

 「食は何より美味しい食べたいと思って食べるほうが体にいい。昆虫大好き!という方は姿形がしっかりあるものがおすすめです。コオロギやバッタなどはサクサクとしたスナック感覚で食べられます。見た目がちょっと苦手……という方にはまず粉末状のものやレトルトのカレーを試してみてください。興味があるなら、食生活に少しずつ取り入れてほしい」と話してくれました。

美味しさを諦めない代替肉
未来の食は自分で選ぶ

 取材にご協力いただいた皆さんが口を揃えていうのは、やはり食は美味しいことが何より大事。環境に優しくて美味しいものの選択肢が、どんどん増えています。私たちは、大変な時代にいるけれど、選択できる未来があるということは、とても恵まれているのかもしれませんね。

エス・ロジックス株式会社(シダックスグループ) https://www.shidax.co.jp/

常南グリーンシステム株式会社 https://dacho.co.jp/

TAKEO株式会社 https://takeo.tokyo/

執筆者

ENTLinK+PLUS編集部(編集部)

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