ファッションを、持続可能にする取り組みが進行中
国連貿易開発会議の資料によればファッション業界は石油業界に次ぐ汚染産業。衣料品の生産時には膨大な水資源を必要とし、膨大な温室効果ガスを排出します。
服一着製造時の水消費量は浴槽11杯分、CO2排出量は500mlのペットボトル約255本を製造したのと同等だとか。国内では1年間に供給される衣服の9割が手放され、その2/3が廃棄されています。
そこで環境負荷を削減し、サステナブル(持続可能)ファッション化へとシフトすることの必要性が叫ばれています。環境省のレポートによると、サステナブルファッション化に向けて5つのアクションが提示されています。
- 今持っている服を長く大切に着る
- リユースで楽しむ
- 先のことを考えて買う
- 作られ方をしっかり見る
- 服を資源として再生利用する
※出典/環境省「サステナブルファッション」
私たち消費者も、長く大切に着たり、リユースしたり、着回しの効く服や、環境負荷の少ない服を選ぶなど、直ぐにできるアクションがあります。製造・提供する側も、サステナブル化に取り組むメーカーが増えてきました。今回は、ファッションを循環型の事業へとシフトさせることをめざし活動している企業「Rinnovation社」のプロジェクトをご紹介します。
サトウキビの搾りカスから、こだわりのデニム製品
Rinnovation社が製造・販売しているのは、沖縄県産サトウキビの搾りカス「バガス」をサステナブル素材として有効活用したデニム「SHIMA DENIM(シマデニム)」。製糖時の副産物であるバガスを沖縄県内で乾燥・粉砕し、岐阜県美濃市で和紙に加工。それを広島県福山市でデニム生地に織り上げます。ジーンズが1本できるまでに世界を1.6周(約65000km)すると言われていますが、日本各地のものづくり技術を連携させることで約14000kmまで移動距離を短くし、環境負荷を削減するとともに、高品質の実現と各地のものづくり産業の活性化に一役買っています。さらに沖縄県の正装「かりゆしウェア」を同社の生地で製造。県内のホテルにて1日単位でレンタルすることのできるサービスを展開しシェアリングによる衣服の循環を実現。さらに3Dボディスキャナーを活用したオーダーメイド販売を実施することで製品に愛着をもたせ、製品寿命を最長化させるなど、サステナブル化に向けた複合的な取り組みを行っています。
バガスを原料にしたシマデニム。軽さと肌触りの良さを兼ね備えた機能性繊維でもある
進行中のユニークな施策のひとつ「多良間島」プロジェクト
すべてのサトウキビ農家がエコファーマーに認定されている多良間島。その製糖工場で発生したバガスからデニムを生産し、エコファーマーの皆さんがユニフォームとして着用します。1年間着用したユニフォームは下取りし「多良間島のストーリーが詰まった天然のユーズドデニム」として販売し、その収益を着用した方や観光協会などへ分配。未利用資源を活用し、エコアイランドとしての島の認知を広め、新たな産業をも生み出す仕組みなのです。
美しい海に浮かぶ、丸い小さな多良間島
何をどう消費するか?毎日の選択で、未来が変わっていく
服の選び方ひとつで、環境負荷を減らせるばかりか、日本のものづくりを支援し、過疎化など課題の解消にもつながります。「消費することの責任と可能性」を知り、意識して選択することで、サステナブルな生活の実現に、各自に一歩近づくことができるのでしょう。
サトウキビの絞りカスがファーマーのユニフォームとなり、天然のユーズドデニムとして収益を生む
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サッポロビールと共同で、麦汁を絞ったあとに発生するモルトフィードとホップ収穫時に出る茎や葉からデニムを生み出すことに成功(黒ラベルMalt & Hops JEANSとして製品化)するなど、さらなる未利用資源の活用にも着手。